質問
今年度初めて会計監査を受けることになりました。監査人から「期首残高の検証」を行う旨の連絡がありましたが、そもそも「期首残高」とは何でしょうか?どのような監査が行われるのでしょうか?
回答
期首残高とは前年度の期末残高のことです。
期首残高の監査は、①期首残高に当年度の財務諸表に大きな影響を及ぼす誤りが含まれているかどうかのチェック(期首残高は正確か?)、②会計方針の継続性のチェック、の2点を中心に手続が実施されます。
期首残高の定義
会計期間の開始時点に存在する勘定残高をいう。期首残高は、前年度の期末残高に基づいており、過年度の取引及び事象の影響と前年度に採用した会計方針を適用している。期首残高には、期首に存在する偶発債務等の注記が必要な事項も含まれる。
監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」|日本公認会計士協会
期首残高=前年度の期末残高と理解するのがわかりやすいかと思います。
定義に「会計期間の開始時点に存在する」とあることから、PL項目は(会計期間の開始時点はゼロのため)含まれず、BS項目が主な対象となります。
偶発債務(他の者の借入に対する保証など)などBSに計上されない資産・負債がある場合には、それらも期首残高に含まれます。
前任監査人の有無に関係なく実施する手続
- 前年度の期末残高が当年度に正しく繰り越されているかどうかのチェック。
→前年度の総勘定元帳の期末残高と当年度の総勘定元帳の前期繰越額の一致を確かめる、等の手続が行われます。 - 期首残高に適切な会計方針が適用されているかどうかのチェック。
→前年度の財務諸表の注記を閲覧したり、質問事項を一覧にして文書での回答を求める等の手続が行われます。
→前年度と当年度で適用する会計基準が異なる場合には、修正の要否を検討することとなります。
前任監査人がいる場合に実施する手続
前任監査人がいる場合には、前任監査人から新任監査人に対して情報提供が行われます(一般的に「引継ぎ」といわれます)。守秘義務を解除するために、引継ぎの前に会社・前任監査人・新任監査人の3者間で守秘義務解除の書面が交付されます。
- 前任監査人の監査報告書の閲覧
→監査報告書を読むことで、前年までにどのような枠組みで財務諸表が作成されていたか、財務数値や注記に重要な誤りがあったか等を確かめます。 - 前任監査人の監査調書の閲覧
→監査上のリスクがどの勘定科目や業務プロセスにあるか、監査報告書で報告されていない(重要性の低い)財務数値や注記の誤りがあるか等を確かめます。
→監査が適切に実施されている場合には期首残高が正しいという判断につながります。反対に、監査が適切に実施されていない場合には期首残高に対して追加の手続を実施します(下記、「前任監査人がいない場合に実施する手続」を参照)。
前任監査人がいない場合に実施する手続
前任監査人がいない場合や事情により前任監査人からの引継ぎが行われない場合(例えばお亡くなりになっている等)、または前任監査人の監査が不十分な場合には、新任監査人は期首残高に対して追加の手続を実施します。
- 期首残高が正しいことを確かめるための監査手続の実施
→前期末残高に対して監査手続を実施します。例えば以下の手続が行われます。- 預金や借入金残高に対する銀行への確認
- 売掛金や買掛金等の債権債務に対する相手先への確認
- 売掛金や買掛金等の流動資産・負債について当年度の入金・支払状況のチェック
- 棚卸資産について当年度の実地棚卸の結果をもとに期首の数量に遡って調整する
- 勘定科目の明細をレビューし異常な項目が含まれていないかどうかのチェック
- 引当金の計算基礎資料を入手し、必要な情報に漏れがないか、計算は正確に行われているかの検証
- 株主総会や取締役会議事録の閲覧(重要な取引の有無のチェック)
留意点
- 期首残高に対して監査報告書は発行されません。
- 期首残高に対して十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合で、その影響が重要な場合には、監査範囲の制約に関する限定意見が表明されたり、意見不表明となります。
- 期首残高に当年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす誤りがあり、かつそれが当年度の財務諸表で適切に処理されていない場合(又はその表示若しくは注記が適切でない場合)には、限定意見が表明されたり、不適正意見となります。
- 上記2、3の事態を避けるために、前年度の財務諸表を修正し株主総会で承認をすることが必要となる場合があります。

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