監査意見はどのようにして決まるのですか?

質問

会計監査では、適正意見や除外事項付適正意見、不適正意見など意見の種類があると聞きましたが、どのようにして意見は決まるのでしょうか?

回答

監査意見は、会計監査人が入手した「監査証拠」を総合的に判断することで決定されます

監査証拠とは何か?

監査証拠とは、会計監査人が監査手続を実施する過程で入手した情報のうち、意見表明に利用する情報のことをいいます。
例えば、
試算表、仕訳帳などの会計データや、株主総会議事録や取締役会議事録などの重要な会議体の議事録でしたら、ほぼ100%監査証拠になります。
重要な会議体以外(例えば営業会議等)のその他の会議体の議事録でしたら、場合により監査証拠となったりならなかったりします。
会計監査人が質問をした事項に対する会社側の回答は、通常は監査証拠となりますが、単なる雑談の場合には監査証拠とならない場合もあります。

ポイントは、会計監査は人が実施する作業であり、証拠をどのように判断するかは人によって異なるということです。
公認会計士でしたら会計基準については一定の知識があるため、特定の取引をどのように会計処理するかについては各人で判断が割れることは少ないと思います。
一方で、会計処理以外の部分、具体的には経営者や経理担当者の誠実性などをどのように判断するかは、十人十色です。雑談を何とも思わない人もいれば、ふとした一言に敏感に(悪く捉えれば過剰に)反応する人もいます。何とも思わない人にとっては監査証拠にならなくても、敏感な人にとっては監査証拠(経営者や経理担当者の誠実性や経理レベルの評価)につながることもあります。

総合的な判断はどのようにして行われるのか?

総合的な判断は、以下の項目を中心に検討がなされます。

  1. 監査証拠の質と量は十分か
  2. 虚偽表示は質的、金額的に重要か

監査証拠の質と量

監査手続を実施した結果、入手した証拠の質と量は十分かという観点で、監査証拠の評価を行います。

銀行預金に対する監査手続を例に取り説明すると、

(例:監査証拠の質)
監査証拠を監査人自ら入手した場合(例えば銀行確認状を監査人が直接回収した場合)には、監査証拠の質が高くなります。一方、会社が入手した残高証明書を監査証拠とした場合には、質が低くなります。

(例:監査証拠の量)
試算表における銀行預金残高が複数の銀行口座から構成される場合に、全ての銀行口座に対して残高の根拠資料を入手した場合は完全に量を確保できたといえます(カバー率100%)。一方、特定の口座のみ根拠資料を入手する場合には、カバー率により監査証拠の量が十分かどうかを検討する必要があります。

虚偽表示の質と量

虚偽表示とは、正しく処理した場合の勘定科目・金額・注記等と、実際に財務諸表に表示された勘定科目・金額・注記等の差のことをいいます。簡単にいえば正しい処理と不正確な処理の差額です。

例えば、「現金 1,000」と貸借対照表に表示すべきところ、(わざとでも、わざとでなくとも)「現金 10,000」と表示した場合には、「現金 9,000」が虚偽表示となります(複式簿記であれば何かしら相手勘定があるはずですが、ここでは省略します)。この「現金 9,000」について、質的に重要か、金額的に重要かという観点から判断がなされます。

(虚偽表示の質的判断)
財務諸表利用者の観点から、虚偽表示が財務諸表利用者の意思決定に与える影響を考慮して質的判断が行われます。

(虚偽表示の量的判断)
重要性の基準値と呼ばれる数値基準が設定され、この数値基準をもとに量的重要性が判断されます。

詳細はそれぞれ別稿をご参照ください。

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